Archive for 10 August 2005

10 August

睡眠とアレルギー疾患


日本アレルギー学会秋季集会シンポジウム
座長の言葉 櫻井 滋
 
 睡眠は人々の健康に深く関与する生理機能であるが、これまで一部の専門家の研究的テーマとして、あるいは科学的とは言い難い養生訓の世界で捉えられることが多かった。しかし、近年の睡眠医学の発達により睡眠そのものへの理解とともに、多くの全身的疾患との関連が論じられる時代となっている。
 この度、集会長のご指導により、アレルギー疾患と睡眠の関わりを紹介するセッションを設けるようにとのご指示があり、高森建二先生と共に座長を仰せつかる事となった。このセッションでは、アレルギー疾患と睡眠との古くて新しい関わりを意識していただきたいと願うものである。アレルギー疾患の臨床においては睡眠の障害自体が問題にされることは少なく、「睡眠を妨げるほど重症な症状」として捉えられる場合が多いと考えられる。その典型は呼吸困難を伴う気管支喘息による不眠やアトピー性皮膚炎の痒み、アレルギー性鼻炎の鼻呼吸障害による睡眠障害もその範疇に入るであろう。しかし、近年の睡眠医学研究の成果として、これら病態が「睡眠を契機として増悪するメカニズム」が明らかになりつつある。例えば、アレルギー性鼻炎による鼻呼吸障害が増悪因子となる閉塞型睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠による上気道筋群の弛緩と閉塞を契機に胸腔内圧の過剰な低下が生じる。相対的に上昇した腹腔内圧により胃酸が食道へと逆流(GERD)する。食道下端には気道収縮を惹起するレセプターが存在するため、睡眠中に気管支喘息発作を引き起こす。このように、一見、偶然の合併と思われる病態間に密接な関連があることが明らかになりつつある。睡眠障害はまた、免疫担当細胞の機能にも影響を及ぼし、コーチゾールとは無関係に免疫系に影響を及ぼす。具体的報告としては64時間の断眠により白血球増加とNK細胞数の低下が見られ、睡眠により回復するとする報告がある。その他、睡眠障害がもたらす障害は多岐に及ぶためアレルギー疾患のマネージメントにおいては正常な睡眠を確保することに、従来にも増して意を用いる必要があると考えられる。換言すれば、単に呼吸困難が軽度であるとか痒みが自制内であるというのではなく、睡眠の質を考慮した治療が必要となる。シンポジスト各位にはこれらアレルギー疾患と睡眠の連関についてご報告いただき、会員諸兄の診療や研究のヒントとしていただければ幸いである。

01:07:56 | silentsleep | 1 comment | TrackBacks

もりおか静眠堂医院のご紹介

■ 静眠堂医院の成り立ち

「もりおか静眠堂医院」は岩手県盛岡市のJR盛岡駅前で、ビルの2階部分に開設した床面積わずか40坪の、小さいながら形成外科と内科の複合クリニックです。岩手医科大学の睡眠呼吸障害外来と連携をしながら、内科外科の一般的な診療に加えて睡眠呼吸障害の診断と内科的・外科的治療を一貫して行うことを目的として、平成12年8月8日に開設しました。一泊入院の睡眠検査や「ほくろ」や「しみ」といった形成外科的な悩みごとをはじめ、ラジオフリーケンシー・サージェリーや外科用レーザー機器を用いた咽頭形成、CPAP、bi-levelPAP、在宅酸素療法や在宅人工呼吸療法にも対応しています。
 盛岡へのアクセスは東京駅から新幹線で2時間30分、東北各県からも2時間以内で、出張ついでの検査も可能です。駅からは歩いて3分。専用駐車場はございませんが、自家用車でお越しの場合は駅周辺の豊富な駐車場がご利用になれます。

■ 診療スタッフと開設までの経緯

 院長の櫻井伴子は1956年生まれ、金沢医科大学医学部出身、医学博士です。日本形成外科学会認定医としてクリニックの院長を務める傍ら、岩手医科大学形成外科教室の非常勤講師を兼務しています。
 形成外科領域の経験としては、金沢医科大学形成外科学教室で口唇口蓋裂や顔面外傷などの治療に長く携り、特に口唇口蓋裂の修復の過程で、咽頭を縫縮する際に不適切な修復を行うと睡眠中のいびきの発生や無呼吸が発生することを認識していました。
 現在は他施設におけるUPPP術後にCPAP使用が困難になってしまった症例や耳鼻科的問題点のためにCPAP療法が継続しにくい例の補助手段として、無呼吸に関連する咽頭や鼻腔異常の外科的な処置も手がけています。

 睡眠呼吸障害担当の櫻井 滋は1955年生まれで金沢医科大学医学部出身、胸部心臓血管外科や麻酔科の臨床研修を経て呼吸器内科を専門とし、医学博士、日本内科学会認定内科医、呼吸器学会認定専門医です。
 岩手医科大学第三内科講師および金沢医科大学、弘前大学医学部の非常勤講師を務めています。金沢医科大学呼吸器内科教室時代から、家族に患者がいるという動機もあり、睡眠呼吸障害の臨床に携わることになりました。
 岩手医科大学第三内科に移籍したのち、主に閉塞性肺疾患や呼吸不全例の酸素療法や人工呼吸管理等を担当する傍ら、平成7年に大学病院の内科としては全国でも早い時期に、睡眠呼吸障害外来(通称:いびき外来)を開設して睡眠時無呼吸の診療を本格的に開始しました。
 大学病院では終夜睡眠ポリグラフィー検査を基本とする診断の体制を構築してきましたが、大学病院として確保されているのは今も3ベッド。検査員の配置は取り付け作業のみ、企業の検査員の力を借りながら、すべてを医師が行ってきました。睡眠呼吸障害患者さんの潜在人口から考えると岩手には2万人以上の患者さんが存在すると考えられます。その中で、平成17年までに延べ2000回以上の睡眠検査を行いながら、つめかける患者さんに対応することが困難な状況となり、検査までの長期間の待ち時間が問題となっていました。
 その後、約6年を経過した平成12年時点でもなお、県内はもとより東北地方の睡眠呼吸障害診断の施設と機会は極端に少なく、やむを得ず個人的に多額の資金借り入れを前提に睡眠呼吸障害クリニックを開設する決心をするに至りました。
 看護スタッフは大学病院や救急指定病院で重症患者管理経験のある女性正看護師2名です。人工呼吸器やCPAPの指導や検査までの細かな指導知識も豊富です。夜間の検査は臨床検査技師の国家資格を有する専任の検査員と検査補助員が担当しています。

■ クリニックの設備

 もりおか静眠堂医院は内科と形成外科の診療室兼診察室各1室、形成外科の手術処置用室1、2ベッドの睡眠検査用入院施設を有し、デジタル・ポリソムノグラフィーやデジタルX線装置、血液ガス分析器、呼吸機能検査装置を設備し、電子カルテと医療事務用コンピューターを統合し、アップル社製コンピューター上で運用するあまり一般的とは言えない方式を採用、レス・ペーパー(紙の使用量を減らす)、フィルムレス、現像機器や現像液も不要のシステムを構築しました。
 アップルコンピュータの採用はレントゲン画像やCPAP使用状況データなど、すべての情報を診察机の上にある大型の液晶モニターに表示するためで、カルテの記載も患者さんの目の前で行います。液晶モニターは患者様のためのデジタル・シャーカステンという訳です。
 床面積の制約と同時に入院患者さんのためのシャワー室やトイレを確保する必要があったため、診療録の保管庫を確保することも困難でした。そこで、すべてのコンピューター(レントゲン用サーバー含む)を院内LANで結び、医療情報をデジタルデータとして管理しています。
 ロビーには患者さんにさまざまの診療情報をお伝えするためにコンピューター内蔵の50インチ・プラズマディスプレーを設置し、治療の手順や機器に関する最新情報をテロップとして流しています(写真4)。院内LANの概略はナナオのサイト(http://www.nanao.co.jp/solution/case/medical/morioka/index.html)で紹介されています。

■ 診療の流れと検査

 患者さんご自身で、あるいはご紹介で来院される場合、いびきや眠気の原因を特定するための検査をお勧めしています。
詳しい問診のあとの初回検査には採血検査・呼吸機能検査・胸部レントゲン・頭部レントゲン・心電図などが含まれ、基盤となっている内科疾患や耳鼻科的疾患、骨格の異常などをチェックします。その上で、1泊入院の終夜睡眠ポリグラフィー検査をお勧めしますが、ご家庭での簡易検査をご希望の場合は検査機器の貸し出しも行います。
 睡眠検査はクリニック内の入院検査室で行います。入院は健康保険が適用になり、3割負担で1万円程度です。小さな診療所であるため、お部屋代の差額などは一切ありません。ビジネスマンが仕事帰りに気軽に検査が受けられるように、ご希望の方には最低限の「お泊りセット」を販売していますので、手ブラでの来院も心配ありません。
 検査の前後にはシャワーやシャンプー台のご使用が可能で、翌日直接お仕事にお出かけになる場合にも便利です。検査病室には個別にテレビや机、ドレッサーを備え、検査用ベッドはメーカーに専用品として発注したホテルクオリティーのセミダブルサイズです。
 各室は独立した空調設備と防音設備を持っています。検査は終夜臨床検査技師が監視し、睡眠途中の出来事に対応します。脳波を含む検査結果は翌日お目覚めの段階で、仮説明が可能です。病状が治療を要する重症度の場合には、退院時に治療機器をお試しいただけるよう準備しています。
 正式な検査結果が判明すると、内科的・外科的・耳鼻科的・歯科的な種々の治療法について詳しい説明を行い、ご自身の病状に合わせた治療をお選びいただきます。
特殊な技術や長期の入院を要する治療を除き、すべて静眠堂医院内で対応できますので他の医療施設に転院する必要はありません。
 木曜・日曜・国民の休日を除く毎日、夕方6時ごろまで外来診療を行っておりますので、仕事などのご都合に合わせて来院日をお選びいただけます。また、一度ご来院いただいた方にはコンピューターによる自動予約システムで携帯電話などからの予約も可能です。
 睡眠呼吸障害の治療とあわせて、アレルギーや皮膚疾患、「鼻づまり」や「いびきの音」そのものに対する治療も行っています。また、レーザーによる脱毛、美白、あざの治療にも対応し、ご夫婦でご来院の方々には特に好評を得ております。
睡眠検査の結果、CPAP(経鼻持続陽圧呼吸療法機器)の適応がある場合には診断検査とは別に、効果を確認し適切な治療条件を設定するための検査が必要となります。
 特に健康保険でお使いいただくためには脳波を含む終夜睡眠検査(睡眠ポリグラフィー)が必須の検査となっています。
「視度の合わない」めがねが不快なように、CPAPも使用の方法を誤れば百害あって一利なし。静眠堂医院では治療の指導こそが最も重要と考え、ほぼ全患者さまに記録装置内蔵のCPAPを処方し、CPAP内部に記録された使用状態をコンピューターで解析し、来院のつど医師と患者さんが実際のデータを見ながら問題点を解決できるよう配慮しています。
 クリニックのCPAP管理台数は5年間で450台程度、治療の継続率は常に90%以上を維持しています。CPAPは患者さんのご希望に応じて各社のものを取り扱い、転勤や転居の際には全国の専門機関や専門医をご紹介しています。
 安心して御紹介することの出来る連携クリニックを増やそうと努力しています。特に協力関係を指示しているクリニックを静眠堂ネットワーク・クリニックとして、連絡を密にしています。
 また、終夜睡眠ポリグラフィーが可能で連携している全国のクリニック群を静眠堂スリープラボ・システムズとして医療情報の相互提供、医療品質の維持に努めています。

■ 静眠堂医院のその他の業務

 静眠堂では岩手県内に活動を限定せず、広く全国における睡眠呼吸障害診療に関するコンサルタント業務や簡易診断装置データの解析業務、精密検査、CPAP導入指導の代行などを行っています。このサービスは「隣県で開業しているが診断に自信がない。」「無呼吸と思われる患者がいるが治療法がわからない。」といった場合にご好評をいただいております。
 さらに、睡眠医療に対応した電子カルテの開発、平成15年春からは県外の関連睡眠医療施設の開設支援を開始し、さらに県内にも予定しています。
 今後も微力ながら睡眠呼吸障害の診療環境充実に努力を続けてまいります。ご期待ください。

もりおか静眠堂医院:
〒020-0034
盛岡市盛岡駅前通9-5 佐川ビル2F
電話019-604-3377
FAX 019-604-3387
E-mail : info@seimindo.net
URL : http://www.seimindo.net/

00:22:39 | silentsleep | 2 comments | TrackBacks