24 August

呼吸機能検査は努力が必要?

 呼吸機能検査は努力依存性、なのに小児の呼吸機能を測定していた。なぜ?
大人も子供も呼吸不全がある場合、正に呼吸は死活問題。そこでかなりの努力呼吸となっています。呼吸不全がある場合には最大努力をしても呼吸機能検査の再現性はよくありません。努力していない、あるいはできないことも臨床的な呼吸器の検査の判定には有用な情報なのです。
 一部に強制的に陰圧をかけて測定しようという試みがありますが成功しているとはいえない状況です。

15:52:39 | silentsleep | No comments | TrackBacks

吸痰と気道障害

 小児のルーチンな気管内吸引では、微細な気道粘膜の損傷から肉芽が発生し、 最終的に換気を障害して危険な状況をつくることが呼吸機能講習会で話題になりました。
 成人でも同様の気道障害が起こっていると考えられます。
もとより、気管支の粘液を吸引チューブで吸引できるとしてもせいぜい区域気管支までの主気管支にとどまり、亜区域気管支に吸痰チューブを入れた場合にはチューブとほぼ同等の直径であるため、吸引は肺内の空気を全て吸い出すことにつながり、状況によっては気道が完全に虚脱し、無気肺を生じることになる可能性があります。
 従って、吸引チューブは気管分岐部以下に挿入する場合に充分な注意が必要です。つまり、気管分岐部にぶつけない長さを挿入すること。気道壁に吸い付かない構造の吸引チューブを使用すること。充分な軟らかさを保った吸痰チューブを使用すること(再利用はしない。)などがあげられます。

15:45:25 | silentsleep | 4 comments | TrackBacks

○ BiPAPとNIP、NPPV

○ BiPAPとNIP、NPPV

■BIPAPは商品名、biPAP(bilevel PAP)なら一般名
■bilevel PAPの名はCPAPとの区別を目的にしている。
■CPAPは吸気と呼気を区別しないので、区別できるよという意味でBIPAP。

■NIPは商品名、NIPPV(non-invasive PAP)なら一般名
■NIPもBIPAPもNPPV(non-invesive PAP)

■バイパップとニップは商品名、どちらも考え方(原理)は同じ。
■細かな考え方や呼び名が異なる。→開発者によって命名が変わる。

○ 換気法は結局補助(アシスト)法
 自然な呼吸は患者自身の筋力で営まれ、開始も持続も終了も患者の脳が決定している。吸気筋で吸気し、肺の弾力性で呼出している。

病的状態では
■圧が得られない場合→肺の硬さは正常でも圧力(筋力)が得られない場合。
■量が得られない場合→肺が硬くて通常の筋力では膨らまない場合。
■流量が得られない場合→気道抵抗が高い場合。
■呼吸が調節できない場合→脳の自動機能が失われた場合。
■特種な場合→圧が逃げてしまう場合→気胸

※ 圧不足には圧を、量不足には量を補助してやれば良い事になる。
※ 両方を効率的に補助しようという考えが
→ PAV(Proportional Assist Ventilation)

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15:02:54 | silentsleep | 6 comments | TrackBacks

25 August

臨床呼吸機能講習会 Q&A

◆ 唾液は感染性湿性生体物質ですか?

 標準予防策(スタンダード・プレコーション)では湿性生体物質は感染性と非感染性を区別していません。全てを感染性とすることで、不用意な感染を防止する意味があると考えられます。
 ユニバーサル・プレコーションでは湿性生体物質には「血液」「精液」「便・尿」「膿」であり、「涙」や「唾液」は含まないという記載が見られます。

◆ アンビューバックを使用する時、人工鼻を使用する事に意味がありますか?当院では次の患者さんにそのまま使用しています。

 アンビューバックの汚染を防止するために、バクテリア・フィルターを使用する場合があります。また、長時間使用する場合には人工鼻を使用する場合もあります。いづれの場合も患者ごとに交換するのが原則です。蘇生バッグの消毒を省くためにフィルターを持ちいるという考え方には信頼できる証拠がありません。

◆ 超音波ネブライザー・ハンドネブライザーではどこまで消毒すべきですか?

 理想的には全て消毒し、患者ごとに交換すべきです。しかし、コンプレッサー部分は消毒が困難です。そこで、コンプレッサーが汚染しないようにする必要があります。超音波ネブライザーではチャンバー(薬液を入れる部分)と回路はセミ・クリティカル機器です。患者さんごとに交換が必要です。

◆ 吸入器のシカンは全て集めて同じ容器で消毒し、加熱乾燥しています。正しいでしょうか?

 吸入器(ネブライザーまたはヒューミディファイアー)は全てセミ・クリティカル機器ですので、芽胞以外の微生物を死滅させる程度の消毒が望ましいとされています。加熱乾燥が乾熱滅菌であれば問題ありません。

◆ MRSAは別消毒で同様に加熱乾燥しています。正しいですか?

 もしMRSAが検出されていないけれどMRSAを持っている患者さんがMRSA「マイナス」とされている中に交じっていたらどうしますか?MRSAの患者だけ別にするのは良いとして、不明の患者さんを非病原性とすることには問題があります。出来るだけ個別に扱うべきです。
 滅菌前の予備洗浄では全てを同一の容器で洗浄することに問題はありません。漬け置きは再汚染の可能性が高く、危険なので止めましょう。保存は乾燥状態で一個ずつ行うのが原則です。

◆ VAP予防に最低1日3回の口腔ケアとカフ上洗浄を行っているのですが、有効ですか?

 強いエビデンスはありませんが、有効と考えられます。しかし、洗浄の方法によってはよりリスクを増加させます。特にカフを過信して直接的に水を中入すると誤飲の可能性があります。

◆ 加湿器の水は水道水でよいと聞きましたが、エビデンスはありますか?

 CDCでは加湿器やネブライザーの水は滅菌水を推奨しています。特にバブリング型には滅菌水が必要です。灯芯型では滅菌水・蒸留水・水道水を用いる(II)としている。

◆ 酸素吸入では高流量でも加湿水はいらないという話がありますが、最新の情報はどうなっていますか?

 高流量を何リットル以上かの定義があいまいですが、換気量を全て賄おうとする場合、湿度0の医療用酸素では粘膜の障害や不感蒸泄の増加を通じで間接的な障害を患者に与える可能性が無視できません。少なくとも必要ないという信頼できるエビデンスはありません。
 
◆ 挿管チューブ・気管切開チューブ・閉鎖型吸痰チューブなどはどのタイミングで交換すべきですか?

 感染症予防の目的でルーチンに交換することは必要ないとされています。一方で再挿管あるいは交換時にはVAPを生じるリスクが増加します。(感染以上に危険な交換理由が存在する場合は当然交換を妨げるものではないと考えるべき。)

◆ カフ圧計以外のカフ圧推定の代替法は?

 基本的にカフ圧専用ではなくても圧力が測れれば代用できます。しかし、感覚で代用することは技術の標準化を阻害します。出来るだけ正規品を購入しましょう。

◆ ゴムキャップの付いた(ガラス製)ネブライザーの消毒やコンプレッサーやネブライザーまでのチューブはどうするか?

 ゴムの部品はガラスの本体部分に比べて洗浄消毒が難しいので、あらかじめ別扱いして滅菌しておくか、ゴムキャップまたはネブライザー全体をディスポ化する事を検討しましょう。ネブライザーまでのエアチューブに関しては感染対策に関する推奨はありません。

◆ 口腔内吸引をする際に経鼻的に行うのと経口的に行うのではリスクには差があるのか?

 口腔内に貯留した分泌物(後鼻漏・唾液・喀痰など)は自ら排出できる場合には吸引は必要ありません。

◆ 気管切開・挿管中にサーモベントTM(人工鼻)使用中でネブライザーを行う際には人工鼻を湿潤させてはいけない理由を教えて下さい。

 人工鼻は水分や温度を通過させることなく、気体(呼吸)を通過させる熱交換装置です。一度に大量の水分が通過するとフィルターが目詰まりするため、空気の通過が障害されます。さらに、湿潤があれば真菌や細菌の繁殖も問題になります。基本的にネブライザー使用時は人工鼻をはずすことになります。

◆気管チューブ内へのボスミン投与の際に希釈するのはなぜ?

 一定の長さを有するチューブを経由して投与するため、確実に気道内に到達させること、急激単時間の効果にとどまらず一定の効果時間を期待するためです。原液に効果が無い訳ではありません。

14:02:03 | silentsleep | 3 comments | TrackBacks

11 August

演題:睡眠呼吸障害診療における生理検査の役割

日本臨床検査学会総会(福岡)2005
抄録本文:
【緒言】
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Hypopnea Syndrome: SASまたはSAHS)はJR西日本で起こった新幹線運転士の居眠り事故の原因病態として記憶に新しい。SASは睡眠障害(Sleep Deprivation)あるいは睡眠呼吸障害(Sleep Disordered Breathing:SDB)という広い疾患概念の一部であり、睡眠中の呼吸障害と、その呼吸異常に起因する睡眠自体の障害が共存する病態である。睡眠が人間の基本的な生理機能であることは論を待たず、睡眠のために費やされる時間は生涯の3分の1を占めるともいわれているにもかかわらず、一部の先駆的研究を除き、医学あるいは医療の分野では軽視されてきた分野といえよう。これまで、SASの捉え方にもその影響が色濃く、呼吸障害の側面にのみ関心が集まる傾向があり、その傾向は呼吸器科や循環器科で顕著である。
種々のSDBの中で、ここではまずSASに重点を置き、その病態と診断、さらに検査の実際について述べ、生理検査実施上の課題についても触れたい。
【SASの病態】
教科書的にはSASといえばピックウィック症候群(Pickwickian syndrome)があまりに有名であり、肥満と傾眠そして右心不全というステレオタイプが作られてきた。しかし、「睡眠呼吸障害は肥満者の病気であり、体重の減少により容易に治癒する」と考えることが誤りであることを、今日では多くの人々が知っている。SASの病状は軽症例から超重症例まで著しく広い分布を示し、典型例のように解剖学的異常のみで論議できるほど単純な病態ではないからである。SASの中で最も頻度の高い閉塞型無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndorome:OSAS)は睡眠の深さに依存して起こる上気道の不安定性を背景とする病態である。すなわち、睡眠によって上気道の開存を維持する筋群の弛緩が生じるとともに、吸気筋の活動によって生じた胸腔内圧の変化、ひいては気道内の陰圧化により上気道が容易に虚脱する。虚脱によって空気の流入が妨げられる結果、通常は反射的に緊張して上気道内腔を維持すべき上気道筋が陰圧に抗することが出来ず、吸気努力のみが持続し胸腔内圧は低下し続ける。この際、吸気努力が中枢の短期覚醒を引き起こす。短時間に繰り返し生じる気流の途絶によって低酸素血症が生じるのはいうまでも無いが、繰り返す覚醒反応が交感神経の持続的かつ過剰な緊張を生じる。このような現象が連日連夜の睡眠中に繰り返すうち、カテコラミンの過剰を経て高血圧や不整脈を伴う。さらに、過剰な胸腔内の陰圧は前負荷を増大させて心負荷を増大させ、一方では心室壁の収縮を阻害し心拍出量を減少させる。今日では、これらの血行動態や換気力学的な異常に加えて、全身の炎症性サイトカイン(インターロイキン、CRP、TGF、VGEF)や神経内分泌(Leptin、Orexin、Adiponectin)までもが異常を示すという証拠が次々に明らかにされている。SASは単に睡眠中の呼吸異常というのみでなく、全身性的な生理調節を阻害する重篤な病態であるといえる。
【SASの診断】
使い古された表現ではあるがSASの診断は、まずその存在を疑うことにはじまる。上述のごとく、多彩な病態が直ちにSASに起因するとは一般に認識されにくいため、診断以前のSAS患者は医療機関を訪れていても、催眠薬(睡眠薬・精神安定薬)、降圧薬、利尿薬、冠拡張薬といった対症療法薬が投与されている。不幸にして、これらの対症療法はSASを改善させないばかりか、時には状態を悪化させることさえある。このように多くの患者はすでに医師による診察の機会を得ており、合併症に対する投薬まで行われている。ではなぜSASそのものの診断に至らないのか、今後はそのことを真剣に考える必要がある。
第一にSDBは原因となる呼吸の異常が、もっぱら睡眠中(無意識下)に生じることから、覚醒状態(意識下)の患者自身の自覚症状や覚醒中の臨床検査所見には、病態のごく一部が間接的症状として反映されるのみであり、生理検査、生化学検査といった検査のカテゴリーに関わらず、覚醒中の検査のみでは睡眠中の病態をつぶさに把握することは困難なのである。これがSASの診療では睡眠中の観察(検査)が不可欠な所以である。
第二にSDBにより生じる二次的健康障害が表【臨床症状の表】のごとく多岐にわたることによる。なかでもSDB患者においては心循環器疾患や脳血管障害の発生頻度【文献1】が高いことが統計的に明らかにされており、循環器的症状に注目が必要である。最終的には睡眠と呼吸の両面から生理学的診断が求められる。一方でSAS発症の誘引となる肥満や顎顔面の骨格異常、神経筋疾患や肝腎障害などの臨床症状は、どの部分が基礎疾患に由来し、どの部分が睡眠呼吸障害によるものかの判断に迷うことも少なくない。自覚症状としての不眠、日中の眠気や倦怠感、他覚的なものとして高血圧や心不全症状、狭心症や不整脈というように「ありふれた症状」の組み合わせも診断を困難にしている。
【たかがいびき、されどいびき】
SDBの疑いがある患者の確定診断は最終的にポリソムノグラフpolysomnograph : PSGを用いた終夜検査によりなされる。PSGとは睡眠中の生理学的指標を同時記録するものである。PSGに含まれる検査としては表に示す項目【厚生省の診断方法表】が挙げられ、特に睡眠脳波は睡眠ステージの解析と睡眠中の痙攣性疾患や他の原因による不眠を評価するために必須の検査項目である。厚生省は先に表【厚生省の診断基準表】のごとく、本疾患の暫定的診断指針および治療開始基準を示しているが、平成9年4月にはSDB特に閉塞型睡眠時無呼吸症候群obstructive sleep apnea syndrome : OSASの第一選択治療法として睡眠時の持続陽圧呼吸療法continuous positive pressure : CPAPを健保収載するとともに、保険適応基準【厚生省の適応基準表】では脳波検査を必須の項目としている。検査結果を医師自らが解析する場面を考えると一般内科医にとっては睡眠脳波や睡眠中の筋電図を正確な評価にはかなりの困難が伴う。他方、睡眠状態の評価に明るい精神科医や神経内科医にとって呼吸状態の詳細な評価は専門外と映るであろう。従って、終夜PSG検査を専門に行い基本的な解析を専門とする検査員(ポリソムノグラファー:polysomnograph technician :PSGT)の養成が急務である。この分野で最も進歩しているアメリカでは米国睡眠学会ASDAを中心に詳細な診断と治療のための各種ガイドライン【文献】が出版され、専門検査技師の養成も盛んに行われている。さらに、ガイドラインには診断のための施設基準まで詳細に記述されている。残念ながら我が国には同様の基準がまだ存在せず、多くの施設が独自の基準により、それぞれが可能なレベルで応急的な検査と診療が行われているに状況である。


 日中に行われる生理学的診断検査の役割は限定的と述べたが、。上気道の動的特性を反映するフローボリウム曲線などの換気力学的検査や心電図などの循環機能検査、動脈血のガス分析などがある。
 現在、睡眠呼吸障害診断法のゴールデン・スタンダードは睡眠ポリグラフ(PSG:polysomnograph)である。PSGは就寝中に複数の生理検査を同時に行い、複数の生理パラメーターの病態生理学的関連性を時系列的に推定する検査法であるが、画像診断や生化学的検査に慣れきった現代の医療現場では、その煩雑さ故に検査自体の普及が立ち遅れている。しかし、如何に煩雑であっても、その方法でなくては得ることが困難な診断情報が存在する以上、現段階ではこの臨床検査を省くことは適切でない。
 睡眠呼吸障害の簡易診断検査として一般的な就寝中の酸素飽和度測定検査はPSGの十数項目にわたる指標のうちの1パラメーターに過ぎず、この方法のみによるスクリーニングは、酸素飽和度が障害される特定の疾患を診断する場合に有用であっても、数ある睡眠関連の疾患を評価することができず、結果的に不完全な診断と治療方針を導く可能性を秘めている。
 標準的なPSGでは脳波、筋電図(オトガイと下肢)、心電図、酸素飽和度、口鼻気流、胸腹壁運動、呼吸音、睡眠姿勢、食道内圧など13から15項目の記録を就寝中の8時間にわたって連続測定するが、なぜこのように多様で煩雑なパラメーターが必要かについて理解を深める必要がある。人々の眠りは就寝時間=睡眠時間としうるほど単純ではない。睡眠は深さと持続時間の関数であり、短時間でも熟睡する場合や長時間でも十分な睡眠深度が得られないなど、就寝し、意識を失っていることがすなわち正常な睡眠ではないため、睡眠中の現象をとらえる場合には脳波をモニターしながら評価しない限り適切な評価は行いえないのである。その意味でPSGにおける脳波測定は信頼に足る睡眠検査に不可欠の要素である。さらに、夢を見ている状態として知られるREM睡眠では全身の骨格筋が弛緩し、呼吸と循環は覚醒時やより深い睡眠と比較して、より不安定な状態となる。そこで、全く正常な被験者においても無呼吸や不整脈などを認めることが少なくない。逆にREM睡眠期において骨格筋の弛緩がみられない状況も観察され、夢の内容が現実の動作となることがある。いわゆるREM関連行動異常症候群である。筋電図はこれらの現象がREM期に生じているか、あるいは異なる病態かを教えてくれる。さらに筋電図は上気道の安定性を表現し、上気道開存筋群の活動度が評価できる。また、下肢筋の律動的な収縮によって脳波上の覚醒反応が見られれば、周期性四肢運動障害を疑う。呼吸や循環系の指標からは低酸素血症や不整脈の原因が推定できる。このように、単に低酸素血症が生じなければ健康に支障がないという単純な発想では睡眠関連疾患の評価が出来ないのである。
 睡眠呼吸障害の典型である睡眠時無呼吸症候群が社会に広く認知され、個人の健康はもとより、交通事故や労働災害を介して社会生活に大きな影響を与える可能性のある症候群であることが明らかとなっている現在、睡眠呼吸障害の確定診断検査として欠くことのできない睡眠時の生理検査は益々その役割を増すものと考えられる。

05:11:22 | silentsleep | 2 comments | TrackBacks