Complete text -- "非侵襲補助換気療法と人工呼吸療法"

11 August

非侵襲補助換気療法と人工呼吸療法

気管内挿管や調節機械換気が中心であった人工呼吸管理は、近年その様相を大きく変えようとしている。紙面の都合で詳細についての記述は困難だが、マスクを用いで行う非侵襲補助換気NIPPVが急速に普及しているからである。ここではNIPPVを、酸素療法と従来からの呼吸管理法である挿管を前提とした侵襲的人工呼吸法との中間に位置付け、概説する。

□ 人工呼吸療法(気管内挿管下)

【目的】臨床的な目的を列挙すると酸素療法に不応の低酸素血症・急性呼吸性アシドーシス・絶えがたい呼吸困難の是正、呼吸筋疲労・無気肺の防止や改善、痙攣のコントロールや手術、麻酔に際して鎮静と筋弛緩を許容する、心筋梗塞などの急性期において全身および心筋酸素需要量を軽減する。頭蓋内圧の減圧やフレイルチェストの内固定なども重要な目的である。
 
【適応】臨床的には以下のような状況が適応となる[表1]。

挿管下人工呼吸管理の適応(表1)

絶対適応
1) 呼吸停止・不安定な呼吸を伴う意識障害
2) 管理不能な不穏状態で大量の鎮静薬使用
3) 意識混濁かつ脈拍50回以下
4) 血圧70 mmHg以下あるいは循環動態が不安定
相対適応
1) 吸回数35回以上で、進行性の悪化
2) pH7.30未満で進行性あるいは急速な悪化
3) 酸素投与にてもPaO2 45 mmHg以下
4) 精神状態の悪化

【技術:人工呼吸のモード】
現在の呼吸モードの基本はSIMV synchronized intermittent mandatory ventilationである。SIMVは自発呼吸に同期して設定回数だけの強制換気が行われる。さらに自発呼吸には圧補助pressure support PSが付加される場合が多く、SIMV+PSでの管理が基本となる。
強制換気は従量式volume targetedと従圧式pressure targetedがあり、通常は前者である。鎮静中は自発呼吸が少ないため従量式調節呼吸volume limited control ventilation VCVか従圧式調節呼吸pressure limited control ventilation PCVとなる。通常は換気量維持を目標にVCVに、硬い肺では気道内圧の制御が重要であるためPCVを基本とする。自発呼吸を補助するPSは人工換気からの離脱の際にも有用なモードである。
【初期設定】
1)酸素濃度(FIO2) 1.0
2)換気モード SIMV+PS
3)トリガー ?1?2 cmH2O
4)目標換気量 6?7LPM
一回換気量として10(8?12)ml/kg
5)I/E比 1:2 ? 1:3
6)呼吸回数 12(10 ? 20)
7)プレッシャーサポート 換気量10 ml/kgになる圧
8)PEEP 2 cmH2O

【アラーム設定】
1)最大気道内圧 50 cmH2O未満
2)最大分時換気量 設定換気量の1.5倍
3)最小分時換気量 設定換気量の0.5倍

【目標】

FIO2を0.6以下かつPaO2が60mmHg以上(SpO2 90%以上)

初期設定では純酸素で換気し、酸素化能力を評価する。提示した初期設定は肺の硬さが正常で気道抵抗にも異常がない状況を基準としている。バイタルサインを把握し、可能な限り速やかに換気力学モニターを用いて病態を把握する。

□ 非侵襲補助換気療法

【目的】
非侵襲補助換気療法の目的は基本的に人工呼吸と同様であるが、気管内挿管などの侵襲的な気道確保を行わず、鼻あるいは顔マスクにより呼吸補助を行う。
【適応】
 呼吸性アシドーシス(=高二酸化炭素血症)を伴う慢性呼吸不全の急性増悪はNIPPVの最もよい適応である。重篤な感染症や意識障害例は適応にならない[表2]特に自発呼吸がないあるいは不安定な場合は挿管下の人工呼吸に移行する。
【目標】
FIO2を0.6以下かつPaO2が60mmHg以上(SpO2 90%以上)は同様である。しかし、NIPPVは気道確保をあえて行わず、いわばリーク(漏れ)を容認する技術であるため、その目的は呼吸の調節ではなく、補助であることに関する十分な理解が重要である。NIPPVは開始後数時間が不安定な時期であり、初期の管理はベッドサイドで医師がマスクを手で保持しながら行う必要がある。

【技術:バイレベルPAP装置】
NIPPVを目的として開発された機器はフロージェネレータータイプと呼ばれ、基本的にCPAP装置と同様の原理だが、吸気圧と呼気圧を別々に設定することができる。従って、呼気時にはPEEPのように吸気時にはプレッシャーサポートのように作用する。本格的に呼吸管理に用いるためには、最大供給圧が30cmH2O以上で酸素濃度を正確に調節できる性能をもつことが望ましい。

【初期設定】
1)酸素濃度(FIO2) SpO2が90以上を保つように設定
2)換気モード S/Tモード(自発感知および時間換気併用)
3)吸気時陽圧 10 cmH2O
4)呼気時陽圧(PEEP) 4 cmH2O
5)timed back up 回数 12/分

非侵襲換気補助療法の適応(表2)

適 応
1) 吸気補助筋の使用、奇異性呼吸運動といった努力様呼吸を伴う呼吸困難の自覚
2) pH<7.35かつPaCO2>45 mmHgの呼吸性アシドーシス
3) 呼吸数>25/分
除外基準
1) 呼吸停止
2) 循環呼吸不安定
3) 患者の協力が得られない、意識障害
4) 最近の顔面手術、食道および胃の手術
5) 頭部顔面の外傷あるいは火傷
6) 誤嚥の可能性が高い

酸素療法と非侵襲換気補助、人工呼吸療法は互いに別個の技術ではなく、呼吸不全の診療にあたって連続的、有機的に駆使する必要のある技術である。特に非侵襲換気補助療法はCOPDの挿管回避による死亡率の減少や気管支喘息例の気管内挿管回避など具体的な成果が報告されている。これら新しい技術は通常の人工呼吸と比較してどちらが優れているかという視点ではなく、除外基準にあたらない場合には早期に非侵襲換気補助を試み、効果が不安定な場合や無効の場合は定型的な人工呼吸管理に移行する体制が必要である。
【看護サイドメモ】
■人工呼吸器の事故
人工呼吸器の事故の発生要因からチェックリストをつくる
□ 整備点検履歴の管理
□ 機器に関する知識収集
□ 指示内容の確認
□ 機器の機能に関する理解
□ 装着前の機能確認
? コンセント(電源)の接続、スイッチを確認する
? 人工肺を装着して正常作動確認
□ アラームの作動確認ができること:どうすれば鳴らせるか?
? 換気量 人工肺をはずす・回路の一部をはずす
? 気道内圧 人工肺を手で潰す(最高圧)・はずす(最低圧)
? 酸素濃度 21から100%まで変化させて確認・供給源をはずす
□ 挿管中の観察
? コンセント(電源)の接続、スイッチを確認する
? 空気の流れをパートごとに把握する
患者側からチェック開始(リザーバー付きアンビューバッグを用意)
リザーバー付きアンビュバッグ6L/分で用手換気し患者の安全確保を優先する
挿管チューブの閉塞や屈曲を確認する
呼吸状態が許せば呼吸器をはずしてテスト肺を装着する
吸気回路(逆行性の例)
テスト肺(挿管チューブ)と呼吸器回路の接続部
換気モニターラインと回路内圧モニターラインの確認
加湿装置の装着部と水位の確認
水受け(ウオータートラップ)の取り付け状態
吸気側回路の接続部とチユーブ破壊部分からの洩れ
吸気フィルターの詰まり
吸気側バルブ(弁)の破損装着を確認
酸素モニターの機能点検
酸素・圧縮空気の供給源装着状態
呼気回路
呼気側回路の接続部とチユーブ破壊部分からの洩れ
呼気側バルブ(弁)の破損装着を確認
換気量モニターのセンサー
酸素・圧縮空気の供給源装着状態

□ 加湿器には精製水以外のものを混入させない
□ リザーバー付き蘇生用(アンビュ)バックの準備
□ 再挿管用救急カートの整備

■人工呼吸器の事故防止対策

□ 使用前
機器の点検の確認
責任者を定め、定期点検を必ず実施する。(破損、亀裂、回路の組み立)
病棟にある人工呼吸器の種類と使用方法を確認しておく
定期的な組み立て訓練実施
説明書は、一定の場所を決めて保管する。
機器の使用方法は、全員が必ず説明書を読んでおく。
看護師は、主治医が患者及び家族に説明する際に同席、
患者情報・方針を担当看護師全体で共有する
□ 使用中
設定条件の確認等
設定条件は、医師が指示簿に記入したものを確認する。
指示変更時も、医師が指示簿に記入し、看護師は指示を確認する。
コンセント(電源)接続、スイッチの確認
使用中の必要物品の確認(アンビュバック、吸引セット、加湿器用蒸留水)
機器の点検と患者観察
医師、看護師、呼吸療法士は、設定条件通り正しく作動しているか確認する。
チェック表に基づいて、医師、担当看護師、呼吸療法士がチェックする。
(指示変更時、ケア処置終了時、勤務交代時等)
医師、看護師、呼吸療法士は機器を過信せず訪室のたびに確認し記録する。
胸郭の動き、呼吸音の確認、自発呼吸の有無、意識状態→自己抜管防止
回路の接続、機器の作動確認
回路の接続間違い、接続の外れ、閉塞の有無、蛇管に水溜はないか、
加湿器の精製水のチェック
加湿器には精製水以外のものを混入しない。
加湿用水の表示、保管場所、容器の区別をする。
アラーム音の確認、患者観察項目の明文化
気管内チューブ挿入中の固定の確認
上顎(頬部)に確実に固定する
カフ圧の確認(カフに注入したエアーの量ではなく圧のチェック)
チューブ固定位置のずれ確認(マーキングしておく)
絆創膏固定の確認
停電時用手換気手順の確認
非常電源の確認
□使用後
速やかに、再び使用できる状態にしておく。(破損の点検等)
人工呼吸器の準備と仕業点検
人工呼吸器のトラブルとその対策

■ 人工呼吸器のアラームが鳴ったら

? 原則としてアラームはキャンセルしない。
? 酸素濃度を100%にする。
各種モニターによりバイタルサインを確認する
酸素飽和度測定を開始する
? どのアラームがなったのか確実に把握する
換気量アラーム 洩れ、はずれ、気胸、電源はずれ?
最高換気量アラームはプレッシャーサポート+洩れのとき
発熱や苦痛で自発換気が過大になった場合
最低気道内圧アラームも同時になることあり
最高気道内圧アラーム つまり、曲がり、痰、自発呼吸?
酸素濃度設定ミス、酸素供給源、酸素濃度計?
? 必要があってアラームをキャンセルした場合は、自らの息を止めよ
自らが苦しさを感じた時点では、患者はなおさら危険な状態にある
迅速に対応せよ
? 回路をはずすことが許可されている場合は用手換気を行い
高いPEEPを使用している場合には安易に回路をはずしてはならない
用手換気では呼吸状態を維持できない場合は回路をはずしてはならない
? 気管内吸引を行って気管内チューブの疎通性を確認する
回路をはずせない場合でも閉鎖型吸引チューブで疎通性を確認する
? 一旦呼吸器を再装着して作動状況を確認する
? 再度アラームが鳴った場合、ただちに他の看護師を召集する
1名が用手換気、1名が呼吸器の点検を行う

■用手的人工呼吸
■気胸への対処
■人工呼吸器の設定項目の意味


【参考書】
1) 宮城征四郎監修  呼吸器病レジデントマニュアル 第3版 医学書院 2000 
2) Dana Oakes Clinical Practitioners Pocket Guide to Respiratory Care 1994
3) David J Pierson Fundation of Respiratory Care 2000
04:53:59 | silentsleep | | TrackBacks
Comments

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