Complete text -- "臨床呼吸機能講習会 Q&A"

25 August

臨床呼吸機能講習会 Q&A

◆ 唾液は感染性湿性生体物質ですか?

 標準予防策(スタンダード・プレコーション)では湿性生体物質は感染性と非感染性を区別していません。全てを感染性とすることで、不用意な感染を防止する意味があると考えられます。
 ユニバーサル・プレコーションでは湿性生体物質には「血液」「精液」「便・尿」「膿」であり、「涙」や「唾液」は含まないという記載が見られます。

◆ アンビューバックを使用する時、人工鼻を使用する事に意味がありますか?当院では次の患者さんにそのまま使用しています。

 アンビューバックの汚染を防止するために、バクテリア・フィルターを使用する場合があります。また、長時間使用する場合には人工鼻を使用する場合もあります。いづれの場合も患者ごとに交換するのが原則です。蘇生バッグの消毒を省くためにフィルターを持ちいるという考え方には信頼できる証拠がありません。

◆ 超音波ネブライザー・ハンドネブライザーではどこまで消毒すべきですか?

 理想的には全て消毒し、患者ごとに交換すべきです。しかし、コンプレッサー部分は消毒が困難です。そこで、コンプレッサーが汚染しないようにする必要があります。超音波ネブライザーではチャンバー(薬液を入れる部分)と回路はセミ・クリティカル機器です。患者さんごとに交換が必要です。

◆ 吸入器のシカンは全て集めて同じ容器で消毒し、加熱乾燥しています。正しいでしょうか?

 吸入器(ネブライザーまたはヒューミディファイアー)は全てセミ・クリティカル機器ですので、芽胞以外の微生物を死滅させる程度の消毒が望ましいとされています。加熱乾燥が乾熱滅菌であれば問題ありません。

◆ MRSAは別消毒で同様に加熱乾燥しています。正しいですか?

 もしMRSAが検出されていないけれどMRSAを持っている患者さんがMRSA「マイナス」とされている中に交じっていたらどうしますか?MRSAの患者だけ別にするのは良いとして、不明の患者さんを非病原性とすることには問題があります。出来るだけ個別に扱うべきです。
 滅菌前の予備洗浄では全てを同一の容器で洗浄することに問題はありません。漬け置きは再汚染の可能性が高く、危険なので止めましょう。保存は乾燥状態で一個ずつ行うのが原則です。

◆ VAP予防に最低1日3回の口腔ケアとカフ上洗浄を行っているのですが、有効ですか?

 強いエビデンスはありませんが、有効と考えられます。しかし、洗浄の方法によってはよりリスクを増加させます。特にカフを過信して直接的に水を中入すると誤飲の可能性があります。

◆ 加湿器の水は水道水でよいと聞きましたが、エビデンスはありますか?

 CDCでは加湿器やネブライザーの水は滅菌水を推奨しています。特にバブリング型には滅菌水が必要です。灯芯型では滅菌水・蒸留水・水道水を用いる(II)としている。

◆ 酸素吸入では高流量でも加湿水はいらないという話がありますが、最新の情報はどうなっていますか?

 高流量を何リットル以上かの定義があいまいですが、換気量を全て賄おうとする場合、湿度0の医療用酸素では粘膜の障害や不感蒸泄の増加を通じで間接的な障害を患者に与える可能性が無視できません。少なくとも必要ないという信頼できるエビデンスはありません。
 
◆ 挿管チューブ・気管切開チューブ・閉鎖型吸痰チューブなどはどのタイミングで交換すべきですか?

 感染症予防の目的でルーチンに交換することは必要ないとされています。一方で再挿管あるいは交換時にはVAPを生じるリスクが増加します。(感染以上に危険な交換理由が存在する場合は当然交換を妨げるものではないと考えるべき。)

◆ カフ圧計以外のカフ圧推定の代替法は?

 基本的にカフ圧専用ではなくても圧力が測れれば代用できます。しかし、感覚で代用することは技術の標準化を阻害します。出来るだけ正規品を購入しましょう。

◆ ゴムキャップの付いた(ガラス製)ネブライザーの消毒やコンプレッサーやネブライザーまでのチューブはどうするか?

 ゴムの部品はガラスの本体部分に比べて洗浄消毒が難しいので、あらかじめ別扱いして滅菌しておくか、ゴムキャップまたはネブライザー全体をディスポ化する事を検討しましょう。ネブライザーまでのエアチューブに関しては感染対策に関する推奨はありません。

◆ 口腔内吸引をする際に経鼻的に行うのと経口的に行うのではリスクには差があるのか?

 口腔内に貯留した分泌物(後鼻漏・唾液・喀痰など)は自ら排出できる場合には吸引は必要ありません。

◆ 気管切開・挿管中にサーモベントTM(人工鼻)使用中でネブライザーを行う際には人工鼻を湿潤させてはいけない理由を教えて下さい。

 人工鼻は水分や温度を通過させることなく、気体(呼吸)を通過させる熱交換装置です。一度に大量の水分が通過するとフィルターが目詰まりするため、空気の通過が障害されます。さらに、湿潤があれば真菌や細菌の繁殖も問題になります。基本的にネブライザー使用時は人工鼻をはずすことになります。

◆気管チューブ内へのボスミン投与の際に希釈するのはなぜ?

 一定の長さを有するチューブを経由して投与するため、確実に気道内に到達させること、急激単時間の効果にとどまらず一定の効果時間を期待するためです。原液に効果が無い訳ではありません。

14:02:03 | silentsleep | | TrackBacks
Comments

プリーズ wrote:

人工呼吸中のネブライザーの効果に対するエビデンスありますか?
12/17/05 16:23:13

silentsleep wrote:

ネブライザーの使用目的によりますが、薬剤投与が目的ならば様々なエビデンスがあります。詳しくは英国のガイドラインが参考になります。例えば、薬剤投与に関しては、 Indications for such treatment include bronchodilators for severe acute airflow obstruction [B] and, less certainly,
tribavirin (ribavirin) for respiratory syncytial virus infection in infants [C], corticosteroids for bronchopulmonary dysplasia
in infants [C], surfactants in infant and adult respiratory distress syndrome [C], and epoprostenol (prostacyclin) for pulmonary hypertension [C].
02/01/06 08:22:14

silentsleep wrote:

残念ながら、一般に成人ではデータが不足しています。
だからといって、全く意味がないと云うのは言い過ぎでしょうね、また、一方で術後などに加湿目的などで漫然とルーチンに使うのは愚かでしょう。
02/01/06 08:25:02
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